
管理職になった途端、「残業代が出なくなった」と感じた経験はありませんか。それどころか、労働時間自体はむしろ増えたという声も少なくありません。
マイナビ転職の調査(2025年1月実施、n=800)でも、管理職になって「良くなったこと」の1位は金銭待遇(71.6%)である一方、「悪くなったこと」の1位は残業時間(53.4%)という、一見矛盾した結果が出ています。給料は上がったはずなのに、時間的な負担は増えている。これが多くの管理職が抱えるモヤモヤの正体です。

私自身、200名規模の工場を管理する立場になって、この「残業代が出ない問題」に何度も向き合ってきました。制度の仕組みと、実際に自分がどう向き合ってきたかをお話しします。
なぜ管理職には残業代が出ないのか

多くの会社で、課長職以上は労働基準法上の「管理監督者」として扱われ、残業代(時間外労働手当)の支給対象外になります。これは、管理監督者が労働時間の管理を自分の裁量で行える立場にあるという前提に基づいた制度です。
ただし現実には、管理監督者としての実態(経営に近い権限、出退勤の自由度など)が伴わないまま、名目上の役職だけで残業代の対象から外れてしまう、いわゆる「名ばかり管理職」のケースが問題視されることもあります。マイナビ調査でも、管理職手当の理想額(月10万円)と現実額(月5万円)の間に月5万円のギャップがあるという結果が出ており、多くの管理職が「割に合わない」と感じている実態がうかがえます。
「部下の残業を止めても、自分の残業は減らない」という現実

私が管理職になって最初にぶつかった壁が、まさにこれでした。
部下の残業を減らすために、業務の割り振りを見直したり、定時での退勤を促したりする。それ自体はもちろん正しいことですし、部下の心身の健康を守る意味でも大切な取り組みです。しかし、部下の残業を減らした分の業務のしわ寄せが、結局は管理職である自分に回ってくる。これは工場長という立場をしていると、本当によくあることです。
本社や支社への報告業務、会議の資料作り、部下のフォロー…。定時後にようやく自分の本来の業務に手をつけられる、という日が続いた時期もありました。
発想を変えたきっかけ

ただ、あるときから「部下の残業を止めるだけでなく、自分自身が早く帰るにはどうすればいいか」を意識的に考えるようになりました。
きっかけは単純なことです。部下を先に帰らせておいて、自分だけが遅くまで残っている状態を続けていると、結局は工場全体の業務フロー自体に無理があるということに気づいたからです。
個人の頑張りでカバーするのではなく、業務プロセスそのものを見直す必要がある。そう考えるようになってから、部下と一緒に業務改善に取り組むようになりました。
具体的には、報告書のフォーマットを簡略化したり、朝礼で共有すべき情報とメールで済ませられる情報を整理したり、といった地道な改善です。一つひとつは小さな変更ですが、部下を巻き込んで改善を進めたことで、工場全体の残業時間が徐々に減っていきました。
最近では、AIを使って業務効率化ができるようになってきています。そういったツールもしっかりと使って改善を勧めました。
個人的には、部下を置いてそのまま先に帰ってしまう管理職の姿勢には、正直あまり賛成できません。もちろん管理職と部下では役割が違いますし、すべてを一緒にやる必要はありませんが、「自分たちの職場をどう良くしていくか」を一緒に考える姿勢だけは持ち続けたいと思っています。声をかけること、そして地道に改善を続けること。この2つに尽きると感じています。
残業代が出ないことへの向き合い方

制度上、管理職の残業代の扱いは簡単には変えられません。ただ、マイナビ調査で「管理職を続けていく上で希望するサポートや制度の変更」の1位が「管理職手当の増額」(40.1%)、2位が「残業手当の支給」(21.6%)となっていることからもわかる通り、多くの管理職が同じ問題意識を持っています。
一人で抱え込むのではなく、業務プロセスそのものにメスを入れること、そして会社に対しても実態を伝えていくこと。両方のアプローチが必要だと感じています。
よくある質問
Q. 管理職でも残業代が出るケースはありますか? 「管理監督者」としての実態が伴わない場合(出退勤の自由度がない、経営に関する権限がないなど)は、残業代の支払い対象となる可能性があります。気になる場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談することをおすすめします。
Q. 管理職手当と残業代、どちらが得なのでしょうか? 一概には言えませんが、マイナビ調査では管理職手当の中央値が月5万円であるのに対し、理想額は月10万円という結果が出ています。実際の労働時間と手当のバランスは、会社や役職によって大きく異なるのが実情です。


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