部下育成で大切なことは?管理職が実践する仕事の任せ方と2つの失敗談

部下に仕事を任せたのに、思っていた結果にならなかった。

管理職として、そんな経験はありませんか。

私はアパレルメーカーで工場長を務め、約200名の部下を抱えながら、日々の工場運営や人材育成に向き合っています。

工場長という立場では、目の前の仕事を円滑に進めることはもちろん、部下の成長を考えながら仕事を任せることも大切な役割です。

しかし、実際には思いどおりにいかないことも少なくありません。

私自身、部下への説明が足りず、意図とは違う仕事が進んでしまったことがあります。また、部下の力量を十分に見極められず、期待していた水準まで業務が進まなかった経験もあります。

こうした失敗を振り返ると、仕事を任せる側の私自身にも改善すべき点がありました。

現在は、部下の担当や力量、業務量、納期だけでなく、本人の成長や年度目標も考慮して仕事を任せています。

そして、仕事の目的を丁寧に説明したうえで、部下自身がどのように進めようとしているのかを確認するようにしています。

この記事では、部下育成の基本的な考え方から、ティーチングとコーチングの使い分け、仕事の任せ方、過去の失敗から学んだことまで紹介します。

部下への仕事の任せ方に悩んでいる管理職の方に、少しでも参考になれば幸いです。

目次

部下育成とは?管理職が知っておきたい基本

部下育成とは、部下が仕事に必要な知識や技能を身につけ、自分で考えて行動できるように支援することです。

単に業務の手順を教えたり、仕事を割り振ったりするだけではありません。

部下が新しい経験を積み、できる仕事を増やしていくことも、育成の大切な目的です。

管理職には、組織として成果を出す責任があります。

しかし、管理職がすべての仕事を自分で抱え込んでいては、組織としてできることにも限界があります。

だからこそ、部下に仕事を任せ、経験を積んでもらう必要があります。

一方で、ただ仕事を任せれば部下が成長するわけではありません。

相手の力量を考えずに難しい仕事を任せたり、目的を十分に説明しないまま作業を指示したりすれば、期待した結果につながらないこともあります。

私自身、そうした難しさを経験してきました。

部下育成では、仕事を任せることと、その仕事を通じて成長を支援することを一緒に考える必要があると思っています。

部下育成と業務指示は何が違うのか

業務指示は、仕事を進めるために必要な内容や期限を伝えることです。

一方、部下育成では、その仕事を通じて何を身につけてほしいのか、どこまで本人に考えてもらうのかという視点も必要になります。

例えば、経験の浅い部下には、仕事の手順や注意点を具体的に教えることが重要です。

一方、ある程度経験を積んだ部下には、目的や求める結果を共有し、本人に進め方を考えてもらうこともできます。

どちらが正しいという話ではありません。

相手の経験や力量、仕事の難易度によって、適切な関わり方は変わります。

部下育成で大切な5つのポイント|管理職としての判断基準

私が部下に仕事を任せるとき、最初に考えるのは「誰に任せるのが適切か」ということです。

単純に仕事ができる人を選ぶのではなく、次の5つを判断材料にしています。

判断基準確認する内容
① 担当・役割現在の担当と任せる業務に関連性があるか
② 力量求める仕事に対応できる能力や経験があるか
③ 業務量現在抱えている仕事を考慮しても対応できるか
④ 納期期限までに必要な結果を出せるか
⑤ 成長・年度目標本人の成長や目標につながる仕事か

この5つは、それぞれ独立しているようで、実際にはつながっています。

例えば、仕事を進める力量があっても、すでに多くの業務を抱えていれば、納期に影響するかもしれません。反対に、業務量に余裕があっても、経験が不足していれば、期待した水準まで仕事を進められない可能性があります。

また、本人の成長につながる仕事であっても、納期や求める結果を無視して任せるわけにはいきません。

部下の成長を考えることと、仕事の成果に責任を持つこと。

私は、この両方を考えて任せる相手を判断しています。

部下の成長と年度目標を結びつける

仕事を任せるとき、私が意識しているのが、部下に期待している成長と年度目標です。

部下には、それぞれ担当する業務や役割があります。

また、企業によってさまざまですが、人事考課規定があるような企業では、年度ごとの個人目標もあるはずです。

私は、今回任せる仕事が、その部下の成長や目標につながるかどうかも考えています。

目の前の仕事を終わらせることだけを優先していると、部下が新しい経験を積む機会を十分に作れないかもしれません。

もちろん、成長につながりそうだからという理由だけで、無理に仕事を任せることはできません。

今の力量や業務量、納期とのバランスを考える必要があります。

日々の業務を進めながら、部下の将来にもつながる仕事を任せる。

管理職として、その視点を持つことが大切だと考えています。

部下育成で役立つティーチングとコーチングの違い

部下育成の研修などで、よく耳にするのが「ティーチング」と「コーチング」です。

どちらも部下の成長を支援する方法ですが、基本的な考え方には違いがあります。

項目ティーチングコーチング
基本的な方法知識や手順を教える質問や対話で考えを引き出す
主な目的必要な知識・技能を身につける気づきや主体的な判断を促す
向いている場面未経験の業務、基本手順の習得経験を活かした課題解決や振り返り
上司の関わり方説明、実演、指導質問、傾聴、対話

どちらが優れているということではありません。

部下の経験や仕事の内容によって、使い分けることが大切です。

ティーチング|必要な知識や手順を教える

ティーチングは、上司や指導者が必要な知識、技能、手順などを教える方法です。

例えば、初めて取り組む仕事であれば、目的だけを伝えて「自分で考えて進めてください」と言っても、部下は困ってしまうかもしれません。

その場合は、必要な手順や注意点を具体的に説明することが重要です。

特に、安全性や品質に関わる業務では、守るべきルールを明確に伝える必要があります。

部下の自主性を尊重することと、必要な指導を省くことは違います。

コーチング|質問によって部下自身の考えを引き出す

一方、コーチングは、質問や対話を通じて、部下自身の考えや気づきを引き出すことを重視します。

例えば、仕事の目的を説明した後に、

「あなたなら、どのように進めますか?」

と問いかける方法があります。

上司がすべての答えを伝えるのではなく、本人の考えを聞くことで、主体的に仕事へ取り組むきっかけを作ります。

私自身、過去に部下の力量を十分に見極められず、期待した水準まで仕事が進まなかった経験があります。

その経験から、現在は仕事の目的を説明した際に、部下自身がどのように進めようとしているのかを確認しています。

これは、コーチングで重視される「相手の考えを引き出す」という姿勢とも重なる部分があります。

ただし、進め方を確認するだけでコーチングが十分にできているというわけではありません。

部下の考えを聞き、その内容を理解し、必要な支援につなげることが重要です。

傾聴|相手の話を理解しようとする姿勢

コーチングと一緒に覚えておきたいのが「傾聴」です。

傾聴とは、相手の話を注意深く聴き、考えや意図を理解しようとすることです。

部下に質問をしても、答えを最後まで聞かずに上司が結論を出してしまえば、相手の考えを十分に把握できません。

また、部下が仕事の進め方に不安を感じていても、その話を聞かなければ、上司には分からないことがあります。

質問することだけでなく、相手の話を聞くこと。

部下育成では、その両方が大切だと考えています。

私もこの傾聴については、常に心がけています。

OJT・権限委譲・ストレッチアサインメントも知っておきたい

部下育成には、ティーチングやコーチング以外にも、さまざまな考え方があります。

OJT|実際の業務を通じて育成する

OJTは「On-the-Job Training」の略で、実際の仕事を通じて知識や技能を身につける育成方法です。

業務を経験してもらいながら、必要に応じて指導や振り返りを行います。

ただ仕事を任せるだけでなく、何を身につけてほしいのかを考え、必要な支援を行うことが重要です。

特に工場などの現場ではよくつかわれる手法ですが、指導だけに偏ることが多いかと思います。本人が理解しているか振り返りを行うことが大事です。

権限委譲|判断や実行を任せる

権限委譲とは、業務を進めるために必要な判断や実行の権限を、一定の範囲で部下に任せることです。

仕事を任せる際には、どこまで本人が判断してよいのか、どの段階で上司への相談が必要なのかを明確にすることが大切です。

ただし、権限を委譲したからといって、上司の管理責任がすべてなくなるわけではありません。

任せる範囲と、上司が確認すべきことを整理する必要があります。

これは言葉に表すと「権限を委譲する」だけでしょ?と簡単に考える人も多いようですが、ここで悩む管理職も多いようです。

マネジメントすべき管理職が権限移譲できずプレイヤーから脱却できないそういう職場にならない様にしましょう。

ストレッチアサインメント|少し難しい仕事に挑戦してもらう

ストレッチアサインメントは、現在の能力や経験より少し高い水準の仕事を任せ、成長を促す考え方です。

新しい経験を積む機会になる一方で、難しすぎる仕事を十分な支援なしに任せれば、負担が大きくなる可能性もあります。

本人の力量や業務量、支援体制を考えながら、適切な難易度を判断することが重要です。

私自身も、仕事を任せる際には、部下に期待する成長や年度目標を判断材料にしています。

仕事を任せるときに必ず伝えている4つのこと

任せる相手を決めたら、次は仕事の説明です。

私はメールで伝えることもあれば、状況に応じて打ち合わせを行うこともあります。

その際に共有しているのは、次の4つです。

伝えること内容
目的何のために行う仕事なのか
求める結果どのような成果が必要なのか
スケジュールどのような予定で進めるのか
納期いつまでに完了する必要があるのか

この中でも、特に大切にしているのが「仕事の目的」です。

何をしてほしいのかだけではなく、なぜその仕事が必要なのか。

そこが十分に伝わっていなければ、上司と部下が違う方向を向いて仕事を進めてしまう可能性があります。

そして、現在は説明したところで終わりにせず、部下自身がどのように進めようとしているのかも確認しています。

伝えたことと、伝わっていることは同じではない。

これは、私が仕事を任せるうえで意識していることです。

SMARTの法則|目標や成果を明確にする考え方

目標設定でよく使われる考え方に「SMARTの法則」があります。

一般的には、次の5つの観点から目標を整理します。

項目意味
Specific具体的であること
Measurable達成状況を測定できること
Achievable達成可能であること
Relevant業務や組織の目的と関連していること
Time-bound期限が明確であること

SMARTには複数の表現や解釈がありますが、目標を曖昧にしないための整理方法として参考になります。

例えば「できるだけ早く進めてほしい」という依頼よりも、必要な成果や期限を明確にした方が、相手は何を目指せばよいか理解しやすくなります。

私自身、仕事を任せる際には、目的、求める結果、スケジュール、納期を伝えています。

これらはSMARTの考え方とも重なる部分があります。

ただし、私がすべての仕事でSMARTの法則を正式な手順として運用しているという意味ではありません。

研修で学んだ「情報共有」の本当の意味

以前、私が受けた研修で、今でも印象に残っている話があります。

それは、情報共有についての考え方です。

研修では、お互いが同じ情報を知っているだけでは、十分な共有とはいえず、共有された内容が実際の行動に移されている状態が、より高い段階の共有であるという趣旨の話がありました。

この考え方は、仕事を任せるうえで大切だと感じています。

例えば、部下に仕事の目的や納期を説明したとします。

こちらは説明したので「情報を共有できた」と思うかもしれません。

しかし、相手がその目的を理解していなければ、仕事の進め方が違う方向に向かう可能性があります。

また、目的を理解していても、実際の行動に反映されていなければ、期待した結果にはつながりません。

この考え方を、記事用に整理すると次のようになります。

段階状態
① 情報を知っている仕事の内容や期限を聞いている
② 内容を理解している目的や求める結果を説明できる
③ 認識が一致している上司と部下が進め方や到達点を確認できている
④ 行動に移している共有した内容が実際の仕事に反映されている

※この4段階は、研修で学んだ趣旨をもとに本記事で整理したもので、特定の学術理論や研修の正式な段階モデルではありません。

私自身、以前は説明不足によって、部下が意図とは違う仕事を進めていた経験があります。

だからこそ、今は説明したところで終わりにせず、部下自身がどのように進めようとしているのかを確認しています。

もちろん、進め方を聞くだけで、実際の行動まで一致していると判断できるわけではありません。

任せた後の進捗確認も必要です。

情報を伝えることがゴールではなく、相手が理解し、同じ目的に向かって行動できる状態を目指すこと。

研修で学んだこの考え方は、私が仕事を任せる際に大切にしたいことの一つです。

管理職として経験した部下育成の2つの失敗と改善方法

ここからは、私自身が経験した失敗を紹介します。

部下育成の方法を知っていても、実際の仕事では思いどおりにいかないことがあります。

私の場合、特に大きかったのが「説明不足」と「力量の見極め不足」でした。

失敗① 説明不足で意図と違う仕事が進んでいた

過去に、部下へ任せた仕事が、私の意図とは違う方向に進んでいたことがありました。

原因の一つは、私自身の説明不足です。

こちらは伝えたつもりでも、相手には十分に伝わっていなかったのです。

管理職は、仕事の背景や求める結果を頭の中で理解していることがあります。

しかし、部下が同じ情報を持っているとは限りません。

この経験から、私は仕事の目的を以前より丁寧に説明するようになりました。

仕事が思いどおりに進まなかったとき、部下の理解だけを問題にするのではなく、自分の説明が十分だったかを振り返ることも必要です。

研修で学んだ情報共有の考え方とも重なりますが、「説明した」という事実だけで安心してはいけないと思っています。

失敗② 部下の力量を見極めきれなかった

もう一つの失敗は、部下の力量を十分に見極められず、期待していた水準まで業務が進まなかったことです。

任せる前には、相手の能力を考えていたつもりでした。

それでも、実際に進めてもらうと、自分が期待していたところまで届かないことがありました。

そこで変えたのが、仕事の目的を説明した際に、部下自身がどのように進めようとしているのか確認することです。

こちらから一方的に説明するだけでは、相手がどう理解し、何をしようとしているのか分かりません。

本人の考えを聞くことで、上司の期待と部下の認識に違いがないか確認するようにしています。

これは、コーチングで重視される対話の姿勢にも通じる部分です。

管理職自身の判断が、いつも正しいとは限りません。

だからこそ、相手の考えを聞くことも必要だと感じています。

部下育成では進捗確認とフィードバックも大切

仕事を任せた後も、私は適宜進捗を確認しています。

任せる相手を決め、目的や納期を伝えたからといって、管理職の役割が終わるわけではありません。

実際にどのように仕事が進んでいるかを確認し、必要な結果や納期とのずれがないかを見ることも大切です。

一方で、細かな指示を出し続ければ、部下が自分で考える余地を狭めてしまう可能性もあります。

任せることと、必要な確認を行うこと。

そのバランスを考える必要があります。

フィードバックとは何か

フィードバックとは、相手の行動や仕事の結果について、改善や成長に役立つ情報を伝えることです。

単に「よかった」「よくなかった」と評価するだけではありません。

どのような行動が成果につながったのか、何を改善できるのかを具体的に伝えることが重要です。

例えば、仕事を終えた後に次のような観点で振り返る方法があります。

  • 仕事の目的と進め方は一致していたか
  • 求める結果に対して、何ができたか
  • 困ったことや判断に迷ったことはなかったか
  • 次に同じような仕事をするとき、何を変えられるか

これは部下育成に活用できる一般的な振り返りの例であり、私自身がすべてを定型的に実施しているという意味ではありません。

私が実際に続けているのは、任せた仕事の進捗を適宜確認することです。

進捗確認は監視とは違う

進捗確認をするとき、管理職が意識しておきたいのは、部下を細かく監視することが目的にならないようにすることです。

求める結果に向かって進んでいるか、納期に影響が出そうな状況はないか。

必要なことを確認しながら、部下自身が考えて仕事を進める余地も残すことが大切です。

権限委譲を行う場合も、任せる範囲を明確にし、必要な場面では上司が支援できるようにしておく必要があります。

仕事を任せることと、任せた仕事に責任を持つこと。

この二つは切り離せないと考えています。

部下育成がうまくいかないときに見直したいこと

部下育成がうまくいかない場合、部下本人の能力や意欲だけに原因を求めるのではなく、上司の関わり方も見直す必要があります。

一般的には、次のような点が確認材料になります。

よくある課題見直したいこと
指示と違う仕事が進む目的や求める結果を共有できているか
期待した水準に届かない力量と仕事の難易度が合っているか
部下が自分で判断できない考える機会や判断できる範囲を設けているか
納期に間に合わない業務量とスケジュールに無理がないか
成長が見えにくい本人の目標と任せる仕事が結びついているか
同じ問題が繰り返される振り返りやフィードバックができているか

私自身も、説明不足と力量の見極め不足という失敗を経験しました。

そのため、現在は仕事の目的を丁寧に伝え、部下がどのように進めようとしているのかを確認しています。

部下育成に、すべての職場で通用する一つの正解があるとは思いません。

部下の経験や仕事の内容によって、適切な任せ方は変わります。

大切なのは、うまくいかなかった原因を振り返り、次の任せ方を改善していくことではないでしょうか。

まとめ|部下育成は「伝える」から「行動につなげる」ことへ

工場長として仕事を任せる際、私が考えているのは、部下の担当や力量、業務量、納期、そして成長への期待です。

これまで、説明不足によって意図と違う仕事が進んだことも、部下の力量を十分に見極められなかったこともありました。

その経験から、今は仕事の目的を丁寧に説明し、部下自身がどのように進めようとしているのか確認しています。

部下育成には、ティーチング、コーチング、OJT、フィードバックなど、さまざまな方法があります。

それぞれの考え方を理解し、部下の経験や仕事の内容に応じて使い分けることは大切です。

ただ、私にとって特に印象に残っているのは、研修で学んだ「情報共有」の考え方です。

情報をお互いが知っているだけではなく、理解し、実際の行動に移していくこと。

仕事を任せるときも、説明しただけで終わりにせず、部下が同じ目的に向かって進めているかを確認する必要があります。

目の前の仕事を進めながら、部下の成長も考える。

そして、任せた仕事の結果にも責任を持つ。

それが、私が工場長として大切にしている部下育成の考え方です。

参考資料

本記事の実体験部分は、筆者が工場長として経験した内容と、本人が受講した研修で学んだ内容に基づいています。部下育成の一般的な考え方については、以下の記事も参考にしています。

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