
「もう管理職を辞めたい」
そう感じたことがある人は、決して少数派ではありません。
マイナビ転職の調査(2025年1月実施、n=800)によると、管理職を辞めたいと感じている人は全体で6割。また、管理職になったことで心身の健康が損なわれたと感じる人が7割もいるようで、管理職に対するネガティブなイメージ

私自身、350名規模の工場を管理する立場になってから、何度か「辞めたい」と感じた瞬間がありました。
この記事では、管理職が辞めたいと感じる代表的な理由を整理しながら、自分自身の経験や、実際にどう乗り越えてきたかをお伝えします。
管理職が「辞めたい」と感じる5つの理由
労働問題に詳しい専門家の解説などを参考にすると、管理職が辞めたいと感じる背景には、主に次のような理由があるとされています。

1. プレイヤーからマネジメントへの役割変化に対する戸惑い
現場で自分の専門性を発揮し、成果を出すことにやりがいを感じていた人ほど、管理職になった途端に会議や調整業務に時間を取られ、「何のために働いているのか」を見失いやすいと言われています。

例えば、現場作業や技術力に自信があり、それを評価されて昇進したはずなのに、管理職になってからは1日の大半がスケジュール調整や書類確認で終わってしまいます。「自分がやりたかった仕事はこれだったのか」と、ふと虚しさを感じる瞬間は多くの管理職が経験しています。
2. 部下の育成・指導の難しさ


一人ひとり個性や価値観が異なる部下を適切に導き、成長させることは簡単ではありません。期待したような成果が出ないことへのジレンマも、辞めたいと感じる大きな要因の一つです。
マイナビ調査でも「部下が成長しない・成長が遅い」という悩みは24.0%の管理職が挙げています。
さらに、育成と評価が管理職の仕事としてセットになっている会社も多く、目標設定、指導、評価といったように部下の育成計画や業務を回すための人員配置計画なども管理職の仕事の一つであると言えます。



何度同じ指導をしても、同じミスを繰り返す部下がいる。根気強く向き合っているつもりでも、成長のスピードが期待とかけ離れていると、「自分の指導方法が間違っているのではないか」と自信を失いかけてしまうケースは少なくありません。
また、業務を進めるうえで、人員が不足したときなども追加で補充もなかなか難しい場合もあり、管理職自らプレイヤーもしながらマネジメントすることになり、回らなくなることがあります。
3. 上司と部下の板挟み


部下の要望や不満を上司にうまく伝えられない、あるいは上司の方針を部下に納得してもらえない。中間管理職ならではの、立場上の難しさです。
上司からは「もっとコストを削減しろ」と求められる一方、部下からは「これ以上の負担は限界だ」と訴えられる。両方の言い分が理解できるからこそ、どちらの顔を立てても板挟みになってしまう状況に、精神的に消耗してしまうことがあります。
4. 責任の範囲が広がることへの負担


管理職は個人の成果ではなく、チーム全体の成果に責任を負う立場です。特に中間管理職は、経営層からの目標達成のプレッシャーと、現場からの不満の両方を受け止める立場になりがちです。



部下が起こしたミスやトラブルであっても、対外的な説明責任や再発防止策の報告は管理職の仕事になります。自分の努力だけではコントロールしきれない領域にまで責任を負わされていると感じ、重圧に押しつぶされそうになることがあります。
5. ハラスメントに関する懸念


指導や指摘が「パワハラ」と受け取られるリスクを意識するあまり、必要な指摘すらためらってしまう管理職も少なくありません。マイナビ調査でも「ハラスメントと言われるのを避けたい」という悩みは27.0%と、業務負荷の高さに次いで2番目に多い回答でした。
【事例】 業務上必要な指摘をしただけのつもりが、部下から「きつい言い方をされた」と受け取られてしまう。以降、指摘そのものに強い抵抗感を覚えるようになり、本来伝えるべきことまで飲み込んでしまう、という悪循環に陥るケースがあります。
【体験談】任される部署によって、負担の大きさがまったく違った
上記の5つの理由に加えて、私自身が強く実感してきたのが「責任の範囲」の中身が、任される部署によって大きく変わるという点です。
複数の工場・部署を管理する中で気づいたのは、社内には注目度が高く、投資や人員配置が優先されやすい部署と、そうでない部署が存在するという現実でした。
業績の良い部署を任されているときは、成果も評価に直結しやすく、モチベーションを保ちやすい環境にあります。
一方で、業績が振るわない部署を任されると、状況はまったく違います。予算は削られ、人員は最小限のまま、それでいて求められる成果水準は変わらない。
正直なところ、あまり評価されない仕事や、誰もやりたがらない業務ばかりが回ってくることもありました。同じ管理職という立場なのに、置かれている状況がここまで違うのかと、やるせなさを感じたことが何度もあります。
改善のために動いても、なかなか目に見える成果が出ない時期もありました。
それでも本社への報告では厳しい数字が続き、周囲からの評価も上がらない。恵まれた部署にいる同期や後輩が注目を集めているのを横目に、「なぜ自分だけこんな状況に」という気持ちが積み重なっていった時期もあります。
踏みとどまるために大切にしていること
それでも辞めずに続けてこられたのは、いくつかの意識の変化があったからです。
一つ目:ポジティブな姿勢を意識的に保つこと
恵まれない部署だからこそ、小さな改善や小さな成果でも、自分自身でしっかり認めるようにしています。周囲からの評価がすぐについてこなくても、自分の中での納得感を大切にすることで、気持ちの落ち込みをある程度コントロールできるようになりました。
二つ目:趣味で発散する時間を意識的に確保する
私の場合はDJや音楽、レコード収集が長年の趣味です。仕事の悩みを仕事以外の時間に持ち越さないよう、意識的に没頭できる時間を作ることで、精神的なバランスを保ってきました。マイナビ調査でも、管理職になって「プライベートや家族との時間が楽しめなくなった」と感じる人が55.4%に上るというデータがありますが、だからこそ意識的に確保しない限り、そうした時間は自然には生まれません。
三つ目:限界が来る前に自分自身で気づくこと
管理職になると、部下の変化には気を配れても、自分自身の変化には案外気づきにくいものです。私は「趣味に手がつかなくなってきたな」「休みの日も仕事のことばかり考えているな」といった小さなサインを、自分の限界に気づくための目安にしています。
辞めたいと感じたら、まず考えてほしいこと


マイナビ調査では、管理職を辞めたいと感じている人のうち、相談できる人が「直属の上司」と答えた割合はわずか24.4%にとどまり、「相談できる人はいない」という回答が44.1%と最も高くなっています。社内で一人で抱え込みがちな状況がうかがえます。
もし今、辞めたいと感じているなら、まずは社内・社外を問わず、話せる相手を見つけることをおすすめします。
同じ立場の管理職仲間、趣味を通じた友人、家族。業務そのものの解決策が見つからなくても、話すことで気持ちが整理されることは多くあります。
それでも状況が変わらず、今の環境そのものを見直したいと感じる場合は、無理に一人で抱え込まず、転職エージェントに現状を話してみるだけでも、選択肢を整理する助けになることがあります。
そして何より、限界が来る前に、自分自身の変化に気づくことです。辞めるかどうかの決断は、追い詰められた状態で焦って出すものではありません。まずは自分の状態を客観的に見つめる時間を持つことから始めてみてください。
よくある質問
- 管理職を辞めたいと感じたら、まず誰に相談すべきですか?
社内に相談しづらい場合は、社外の友人や、同じ管理職の立場にある知人など、利害関係のない相手に話すことから始めるのも一つの方法です。状況によっては、人事部やキャリアカウンセラー、転職エージェントへの相談も選択肢になります。
- 恵まれない部署を任されるのは、評価が低いからでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。立て直しが必要な部署にあえて経験のある人材を配置するケースも多くあります。ただし、周囲からそう見られやすいという心理的な負担があるのは事実です。
- 管理職を辞めたら、給料は下がりますか?
役職を外れることで、管理職手当がなくなる分、月々の収入が下がるケースは一般的です。マイナビ調査では、管理職になる前後で年収が中央値100万円ほど上がったというデータもあり、その分だけ変化を感じやすいと言えます。ただし、残業代の支給対象に戻ることで、実労働時間によっては差が縮まることもあります。
- 「辞めたい」と感じてしまうのは、管理職に向いていないということでしょうか?
そうとは限りません。マイナビ調査でも、管理職の約4割が「良くなかった」と感じており、辞めたいという気持ちを持つこと自体は決して珍しいことではありません。向き不向きよりも、置かれている環境や、相談できる相手の有無が影響しているケースも多く見られます。
- 転職と社内異動、どちらを先に検討すべきですか?
今の会社への愛着や、これまで築いてきた人間関係を活かせるなら、まずは社内異動や役割変更の相談から始めるのも一つの手です。一方で、会社の構造自体に問題を感じている場合は、転職エージェントに相談しながら、外の選択肢も並行して情報収集しておくと、判断材料が増えます。
さいごに


ここまで読んでくださったということは、それだけ今、真剣に悩んでいるということだと思います。
管理職の悩みに、明確な正解はありません。私自身、恵まれない部署を任されて「なぜ自分だけが」と感じた時期もありましたし、今でも完璧にこなせているとは思っていません。それでも、小さな改善を積み重ねること、信頼できる相手に話すこと、そして自分の限界のサインに早めに気づくことで、状況は少しずつ変わっていきました。
辞めたいという気持ちは、決して弱さではなく、それだけ真剣に仕事や部下と向き合ってきた証でもあります。今の場所で続けるにしても、環境を変えるにしても、まずはご自身の心と体を大切にしてください。悩みながらでも、前を向いて進んでいく先には、きっと今より納得できる働き方が見えてくるはずです。


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